結婚の約束をしよう

彼氏がいないのが不思議なくらいだ。

「私は婚約者だなんて話、認めてないんだから。」

「そうでしたぁ。」

えへへと笑うと、深月はいつもの様に鉛筆を取り出した。

ここからは、落書き半分デッサン半分の、暇つぶしという時間を過ごす。

「ねぇ結愛、今度あたしで良かったら、まゆ毛整えてあげよっか。」

「まゆ毛?」

「そう。せっかくあれこれイメチェンしてるんだから、化粧まではいかなくても、整えるだけでまた印象かわるよ!」

「…。」

小さなことの積み重ねが、大きな変化へーーーそんな風に繋がっていくのかな。

「ありがとう深月。」

「うん。まかせて!」

深月の提案を断る理由が、私にはなかった。


陵の言動には正直戸惑う事も多くて、9年間分の知らない時間が余計にそう思わせる。

それでも今の私の状況は、悪い方へは行っていないと確信していた。