結婚の約束をしよう

「とんだ災難だったね、結愛。」

「ホントもうかんべんしてほしかったよ…。」

給食が終わったら掃除の時間ーーー私と深月は、廊下の掃き掃除をしながら話していた。

「あたしが助け舟だしてもさ、きっと笹野くんのパワーに押されちゃってただろうしね。」

「…そうかも。」

「ね、ホントに笹野くんと結婚するの?」

深月の興味も、やっぱりそこにあった。

「あれは陵が勝手に言ってるだけだよ。だいたい私に好きな人がいるのは深月も知ってるでしょ?」

「そうだけどさ、あれだけ言われるとねぇ(笑)。」

メガネの下のパッチリとした深月の目が、私の顔を覗き込んだ。

「幼稚園の時の話だからね。よくあるでしょ、意味もわからずに約束しちゃった的な。」

「でも笹野くんって、それを憶えてて守ろうとしてるんだから、ちょっとロマンチックな展開じゃない?」

「…。」

私は何も答えられずに、窓の外を見た。

陵があの約束を憶えていた事は正直驚いたけど、それがロマンチックだなんて思う事はなかった。