「その笹野さん、帰ってきたんだって。今あいさつに来てくれてお母さんビックリしちゃった。奥さん相変わらずキレイでねー。」


え…。

帰ってきたの…?

「…。」

陵が、帰ってきたんだ…。

「あーお腹空いた!シチュー温め直さなきゃ。」

お母さんは、予期せぬ出来事にテンション高めだった。

私は…当時を思い出していた。


陵とは幼なじみで、幼稚園まではよく遊んだりした。


”結愛!大人になったら結婚するぞ!”

”うん、いーよ!”


「…ふ。」

当時の私と陵の幼い会話を思い出して、笑みがこぼれる。

「なぁにお姉ちゃん、1人で笑わないでよ。」

「智沙には関係ないこと。」

「ふーん。」


だけど陵は、陵のお父さんの仕事の都合で、幼稚園を卒園後、遠くに引っ越してしまった。

それ以来だからーーー9年ぶり?

あの時は、幼いながらに悲しかったな。