結婚の約束をしよう

仕方なく、雨で濡れた門を開けて中に入り、ドアをノックした。

「すいませーん……!」

予想はしていたけど、待っても誰も出てこない…。

それでも、諦められなかった。


「あら、どうしたの?」

何度もノックをして呼びかける私に、背後から声が聞こえてきた。

振り返ると、この辺に住んでいるのだろう、たまに見かけるおばあさんが立っていた。

「笹野さんとこなら、確か10年くらい前から居ないよ。」

「……。」

聞きたくない…。

陵の存在を否定する言葉は、聞きたくない。

「帰り…ます。」

「それがいいわね。いつまでもそこに居て風邪をひいたら大変よ。」

私はよろよろと、力なく歩いた。



「ただいま…。」

家に帰って濡れた制服を部屋に干し、部屋着に着替えてからリビングに顔を出した。

「おかえり結愛。後でケーキ取りに行くけど、一緒に行く?今年は大きいのにしちゃった。」