結婚の約束をしよう

たまに吹く強い風が、うつらうつらする私自身を、何度となく起こす。

別にそこまで受験勉強を頑張っている訳でもない私は、単純に睡魔と戦っているだけだった。



まもなく担任の先生が教室に入ってきて、起立の号令を日直がかけるけど、そんなこと誰も聞いていなかった。

「おい、起立が聞こえんかー。」

担任の先生が日直をフォローするけど、教室中に広がったザワザワは消えなかった。


あれは…。

「陵…?」

騒がしい教室で、私はポツリとつぶやいた。

ザワザワが収まらない理由は、先生が見知らぬ男子生徒を連れてきたから。

「はい静かにー。見ての通り転入生だ。笹野、ちょっと自己紹介してくれるか?」

笹野ーーーやっぱり、陵だ。

先生は私たちに言った後、陵に向き直って言った。

「笹野陵です。父さんの仕事の都合で9年ぶりに戻ってきましたー……て、おい、結愛か⁈」

話の途中で急に指をさされた私に、一斉に注目が集まる。