「何で先来たの?」



ドクンッと跳ねた動揺。



『ボーッとしてて………ごめんなさい』

「ん。いいけどさ」



そう言って、私の頭の上に置かれた手。



優しく触れるそれは何らいつもと変わらなくて…


愛しげに見つめてくれるその瞳も、やっぱり後ろめたさの色など含んでいないから…


さっき聞いてしまったことが夢の中のことのように思えたけど……



「あのさ……帰りに話あるから」



煌暉くんが少しためらいがちに言ったように聞こえたその言葉に、



私の目の前が真っ暗になった。



ふらついた身体が、足元から崩れ落ちる。




「え?紫音!?」




薄れゆく意識の途中で……


煌暉くんが私の名前を呼ぶ声が聞こえた気がしたけど……



その声の直後には、私は完全にそれを手放していた。