「新藤さん? 説明して頂きましょうか? .......それとも、私から、課長に」

「うわぁ!!狩野!これは単なる顔合わせのお茶会なんだよ!それ以外何もないって!」


 新藤はかなり慌てて狩野に取り入ろうとしていたが、既に会社を出ていた俺はこの喫茶店へとやって来ては店のドアを開けていた。

 俺が喫茶店の中へと入って行くと、俺の姿に気付いた社員らが顔を真っ青にし席を立ちあがるとテーブルから逃げる様に離れようとした。


「待て、お前らどこへ行く?」


 俺の声に気付いた新藤は恐る恐る振り返り俺と目が合うと他の社員以上に真っ青になっていた。


「いや・・・偶然ですね。こんな所で会うなんて。やっほー課長」


 狩野はポケットに忍ばせていた携帯電話を取り出すとその画面を新藤の顔めがけて突き出した。新藤は「何だ?」とその画面を見ると通信中の画面が目に入ったようだ。

 通話相手は勿論俺。そして、今もまだ通話中で通信時間は言うまでもなく新藤たちの会話を聞いていた時間になる。

 その携帯画面の意味が分かってしまうと新藤はかなり焦っては言い訳がましい事を言い始めた。


「課長!! これはですね、こいつらが是非とも可愛い新入社員の茜ちゃんとお近づきになりたいからとお茶をしたいと言いまして、別に、合コンじゃないですよ!! ねっ、ほら、親睦を兼ねてただのお茶会ですから!」

「そうか、ただのお茶会なら俺が居ても文句ないよな?狩野、お前も座れ。ほら、そこのお前達も全員元の位置に座れ!」



 今すぐにでも逃げ帰ろうとこっそり忍び足でテーブルを離れようとした連中へも全員に睨みをきかせてもう一度元の席へと座らせた。

 どうやらここへ来た社員と言うのは新藤が社内を案内した時に合コンの約束をした連中の様だ。どの社員の顔も見覚えのあるヤツばかりだ。

 こんな非常識な事をしているが、彼らはそれぞれの部署ではかなり優秀な社員達だ。

 だからと、俺の許しもなくこんな場を設けた新藤もこいつ等も俺は見逃すわけにはいかない。