──────ワァァアア!!!!



湧き上がる応援席。
ピッチでは喜び抱き合う選手達。


「…勝った…。」



サッカーの知識なんて何一つない私が、思わず立ち上がってしまうほどの感動。


見に来て良かった。
素直にそう思える試合だった。


相手チームと挨拶を交わし、ピッチを出ていく選手を一人一人目で追って…


って、やめやめ!!
森田を目で追うのはもうおしまい。


今日で、森田との関係はおしまい。



忘れろ、江菜。




「……バイバイ、森田。」



そんな言葉で森田に別れを告げたと同時に


─────グイッ


「っ?!」


いきなり景色が180度回転して、ピッチを見てたはずの私は、


何か温かいものに包まれた。


きつく抱きしめられているこの状況に頭はついて行かなくて



「…っ、ハァハァ……」


私を抱きしめている人物が肩で息をしているんだってことだけは理解出来た。



「……何してんの、森田。」


「…ハァハァ…こっちの、セリフだっつぅの。

来ないかと思った……。」



顔なんか見なくたって分かる。洗剤の匂いに、少しだけ混じった汗の匂い。


「……森田が来いって言ったんじゃん。あ…柄本くんだったっけ?」



こんな時にも、何故か口を付いて出てくるのは皮肉ばっかり。


なんで抱きしめられてるんだっけ…とか、みんなまだピッチにいたのに、なんで森田はここにいるんだっけ…とか


色々頭の中では考えてみるけど、何一つ口に出して聞けない。



「ごめん…」


「…何で謝んの。私の気持ちに答えられないから?」


ギュッときつく回された腕から、やめて…とばかりに身をよじって


緩んだ森田の腕から逃げるように後ずさった。