「あーあ。まじあいつ死んでくれないかな。」
「…」
生徒に悪口を言われるのは慣れている。自分は口うるさい嫌われ教師だから。
それでもやっぱり傷つく。
彼らに感謝される日は来ないかもしれないけれど、将来、少しでも彼らのためになればいい、少しでも彼らの役に立てれば、自分の役割としては充分だと、そう自分に言い聞かせて誤魔化してきたが、やっぱり少し落ち込む。
「先生も大変ですね。」
「え、」
後ろから声をかけてきたのは樋口だった。
「お前、反省文…」
「先生、僕はわかってますよ。先生は僕たちのことを考えて、口うるさく叱ってくれてること。」
「な…」
「まだ子どもだから、先生の言葉を素直に聞き入れることはできませんけど。きっと彼らもいつか気付くはずです。」
「…ありがとう。」
樋口幹生、この問題児の言葉にまさか救われるとは思ってもみなかった。