8月も本番を迎え、窓の外では蝉達が懸命に鳴いている。

「よくやるなー…暑そうなのに。」

ソーダ味のアイスを食べながら、吐き捨てるように言う。

「暑そう」というのは、外がどれほど暑いのか分からないから。

その理由は、クーラーという素晴らしい電機製品のおかげ。

余分に電気代を払う代わりに、部屋は快適な温度を保ち、それに右手にはアイスときた。

これこそが、夏を越すために必要なことだ。

子どもの頃のように、だらだらと休みを満喫することを怒る親もいなければ、休みという貴重な時間を削られる宿題もない。

「大人ってこんなに自由なんだ!」と、一人暮らしを始めて3日目にして感じている。


そんな私、坂本皐月は、高校を卒業してすぐ家を出た。

それは保育士になるため。いろいろと他にも理由はあるけれど。

今は専門学校に通いながら、生活費を稼ぐためにバイトを掛け持ちしている状況。

そして今日は滅多にない休みというわけ。

お気に入りのソファーでゴロゴロするのが、何よりも幸せな時間だ。