思わずたずねると、雄大くんは唇を「え?」の形にした。

それから、理解したように「ああ」と微笑んで、スマホを取り出した。


「ナオは、こいつだよ」


手渡されたスマホの画面に、わたしは目を落とす。

衝撃が、全身を走った。ばらばらのパズルのピースが一瞬にして集まった気がして、鳥肌がたった。


そこには一匹の愛らしい犬が写っている。クリーム色の毛。つんと尖った鼻。まんまるの黒い瞳――。


「こいつ、直太朗ジュニアっていう長い名前だから、ナオって呼んでるんだ。めちゃくちゃ甘えん坊でさ」

「直太朗、って……もしかして、N県のサユリさんちの?」

「え? そうだけど、なんで小林さんが知ってんの? サユリさんは親戚だから、直太朗の子が産まれたのをもらったんだけど」


こんな偶然ってありえるんだろうか。ノアと血を分けた直太朗くんの子が、雄大くんの家にいる。

そして、その雄大くんに、わたしはこうして出逢った。

偶然と呼ぶには奇遇すぎて、まるで誰かが奇跡を起こしたような――。

そう思った瞬間、涙が堰を切ったようにあふれだした。