ノアをここに埋めてやろう。

勝也さんがそう言って指さした場所は、以前「踏むな」と叱られた庭の一角だった。

夜が明けると、わたしは納戸に入っていたシャベルを借りて、ノアを眠らせてあげるための穴を掘った。その間も、涙はずっと流れ続けた。

冷たい体をその穴にそっと横たえて、やわらかい毛を何度もなでた。

金色が混じったクリーム色の毛。昔はなかった白い毛も混じっていて、ひげも白に近いグレーになっていた。

細い脚。乾いた肉球。うっすらと浮いたあばら骨。

わたしと同じ日に生まれたノアは、わたしと一緒に成長し、そしていつしかわたしの歳を追い越して、先に逝ってしまった。

七日間の奇跡を、最後に残して。


「本当に君が、あのノアだったんだね……」


今でも名前を呼べば、何事もなかったかのように現れてくれる気がする。

おひさまにも負けないあの笑顔で、「タマちゃん」って人懐っこく呼んでくれる気がする。