窓ガラスが、がたがたと激しく鳴っている。牢屋の中の囚人が格子を揺らしているような、不穏な音。

雪はいつしか暴風雨へと変わり、窓ごしの視界をほとんど遮断していた。

もう何度目になるだろう、時計を見上げると午前一時だった。わたしが民宿に戻ってから、すでに九時間近くが経過している。

天候の急激な悪化により、捜索が中断されたのが二時間ほど前。トモくんはまだ見つかっていなかった。


……ノアは、家に帰っただろうか。

普通に考えれば帰っているはずだ。捜索隊すらも中断を余儀なくされた今、外に留まっているわけがない。

だけど、さっき見たノアの真剣な瞳が頭をよぎる。


――『絶対に助ける。約束だ』


もしかしたらノアはまだ、ひとりでトモくんを探しているかもしれない。

わたしは深く息を吐き、窓におでこと両手を押し当てた。

こんなことなら、電話番号くらい聞いておけばよかった。わたしは何も知らない。彼の名前すら知らないんだ。