みんな私を可愛いと言ってくれるけど、それは『男のことしての可愛い』という意味。



(仮にも、暴走族の総長なのに・・・・)



言う人はみんな、悪気があって行っているわけではなさそう。

だけど、ヤンキーとしてそれに笑顔で応じるのはどうなんだと・・・円城寺君辺りはうるさい。

でも、接客は笑顔が肝心だし、ちゃんと公私の区別はつけてるし~

毎回そう言われて反応に困るけど――――――――



「本当に、凛ちゃんは良い子だね瑞希君?」

「そーなんですよ、可愛い奴でしょう?」


(か、可愛いと!!?)


多少、納得できない気持ちにもなったけど、すぐにその思いは消し飛ぶ。

なぜなら、彼が同意してくれるから。



「気は利くし、良く働いてくれるし、俺にはもったいないぐらいいい弟なんですよ。」


(わ、私がもったいないって・・・!?)



大好きな相手にそう言われたら、だましている後ろめたさごと、モヤモヤが吹き飛ぶ。

瑞希お兄ちゃんが、私を紹介する言葉にときめく。



(私の望みは、瑞希お兄ちゃんに好かれること。そのお役に立ててるなら―――――――――!!)


お客さんと、楽しそうに話している瑞希お兄ちゃんを見ていたら、自分の気持ちなんてどうでもよくなった。

瑞希お兄ちゃんが笑顔でいてくれるなら、私はそれだけで幸せなのだから。



「またくるよ、凛ちゃん。おやすみ。」

「はぁーい!おやすみなさい、角田様♪」

「瑞希君も、またね?」

「こちらこそ、またのお越しをお待ちしております。」



最後のお客様を瑞希お兄ちゃんが、入口まで見送る。

下げた頭を上げた彼が、お店の中へと戻ってくる。




「ふー!おつかれさーん!」



ドアを閉め、そう言ったところで『終了』となった。



「お疲れ様です、瑞希お兄ちゃん!」

「ああ、凛もお疲れ。今日も助かったぜ。ありがとうな。」



トコトコと一直線に駆け寄れば、瑞希お兄ちゃんが頭をなでてくれた。




「よしよし、良い子だ。」

「わーい!」



〔★完全に動物扱いだ★〕