「まったく、帰りが遅いからどうしてかと思えば・・・チョコちゃんが性犯罪に巻き込まれたって、村さんが知らせてくるからよ。店そっちのけで駆け付けたのに・・・嘘かよ?」

「す、すみません・・・」





私に苦情を言われても・・・と思ったが、これ以上、彼のご機嫌を損ねたくない。






「ごめんなさい、お兄ちゃん。」






嫌われたくないから謝った。






「違う。お前が謝ることじゃない。」

「え?」






そんな言葉に合わせ、そっと頭に手を置かれた。






「凛が悪いわけじゃねぇ・・・」

「で、でもお兄ちゃん、僕のせいでお店を飛び出してきちゃったんですよね?それって僕が、ご迷惑をおかけ―――」

「心配したんだ。」

「お兄ちゃん?」






そっと彼を見上げて、ドキッとした。

真っ直ぐに、真剣な目で彼が私を見ている。








「さっきは・・・ごめんな。きつく言いすぎた。」








そう言うと、片手で私を抱き、もう片手で頭をなでながら告げられる。





「夜市で屋台の接客、お前にとって、はじめてだったのに・・・・最初からできるもんだっていう気でやらせちまってよぉ・・・」

「そ、そんな!お兄ちゃんのお店でお手伝いしてるから、ある程度はできないとー!」

「それとこれとは違う。違うのにさ・・・迷惑な客から従業員を守るのが店長の務めなのに・・・ごめんな。」

「お兄ちゃん・・・・!」





私に語り掛ける目は、怖くない。

優しくて、温かくて、どこか心細いように見えた。






「怒ってない・・・・?」

「怒ってない。むしろ、俺が怒られる方だよ。ごめんな?」

「そんなことないよ・・・・!」

「お前が・・・女といちゃついてる風に見えて、腹が立って・・・悪かった。許してくれるか・・・?」






恐る恐るという感じで言われ、感極まる。










「お、お兄ちゃーん!!」









パイプ椅子から立ち上がり、彼へと飛びつく。








「許すも何も、ごめんなさーい!」








ギュッと抱き付き、頼もしい胸板に顔をくっつける。






「謝らないで!お兄ちゃん悪くないよぉー」

「・・・泣くなよ。ごめんな、泣かせて・・・」

「だって・・・!」

「じゃあ、これで仲直りな?よしよし。」

「ぐす・・・うん・・・・!」







ギューと抱きしめられ、良い子良い子と頭をなでられる。








(よかった・・・嫌われてなくてよかった・・・・!)







今回は、上手く仲直りで来たけど、今度から気をつけよう・・・・







(次は、違った方法で渕上達に仕返しを・・・・!!)




〔★腹黒い凛が発動した★〕