「ホント、大丈夫かよ、凛?まだ、ぼーとしてねぇか?」

「あ!ほ、本当に、なんでもないですよ~?すみません!」

「謝るなって。謝る前に、調子が悪くなったら、いつでも言えよ?凛のことだから、すぐ我慢しちまうんだからよー」

「ちゃ、ちゃんと言いますよ!瑞希お兄ちゃんこそ、無理しちゃダメですよ!?ちゃんと言って下さいね?」

「はいはい!わかってるよ、こいつめぇ~」

「はわわ!?」



ニヤリと笑うと、ほっぺをプニッとつままれる。




(ああ・・・・こうしてると、まるでバカップルみたいで幸せ・・・)



〔★実際は、仲良し兄弟だ★〕



優しい彼の優しさは、いつも私をいやしてくれる。

そんな好きな人に、つくしたいと思う。






「一緒に頑張ろうな?」

「はい!頑張ります!二人で一緒に~!」





そう、2人だったらよかったんだけど――――――






「いつまでじゃれあっている、小動物共。」


ズシッ!!


「重い!?」





その声に合わせ、頭の上になにか乗った。





「早く道具を運べ、凛道。」

「し、獅子島さん・・・!」





そう言いながら、コーヒー豆の入った袋を私に押し付けたのはメガネの先輩。



「おい、伊織!凛の頭に物を乗せるな!首がおれる。」

「フン、これぐらいでヘタレてどうする?瑞希も早く机を設置しろ。テーブルクロスが置けん。」

「わーてるよ!」

「俺まで手伝いに来て正解だったな。お前ら2人では、仕事にならん。」




そうなんです。


土曜夜市の屋台、お客さんが多く来ることを見込んで、今年から3人体制になったのです。

私も瑞希お兄ちゃんも、毎週入ることになったんだけど、3人目は週替わり。



「凛道。プラスチックカップの取り扱いには気をつけろ。キレイな手で触らんと、食中毒問題だからな・・・!?」

「はい・・・!」



よりによって、一番怖い獅子島さん。

前回のカーチェイスで、仲良くなれた気がしたけど、やっぱりまだ怖い。



「それもそうだな。凛、さわる時はこの薄手のビニール手袋を使えよ?」

「瑞希お兄ちゃん。」

「金のやり取りは伊織がする。凛は客引きと、俺の助手すればいいからな?」

「はい・・・♪」



そう言って笑いかける彼の顔で、お口直し。






(これで二人っきりなら、どんなにいいか・・・)



車から荷物を下ろしながら、少しだけがっかりする。