「俺? ケント。水沢健斗」
「み、水沢くん」
苗字を呼んだだけなのに、勝手に心臓が飛び跳ねた。
その勢いで、私はとんでもないことを口走ってしまった。
「水沢くん、私と付き合ってくれませんか?」
自分で言って、自分で驚いた。
少ししか関わったことのない人に告白されても、困惑するだけ。
経験からそうわかっているはずなのに、この口が勝手に暴走してしまった。
自分の仕出かしたことに今さら気づき、一層顔が熱くなる。
「……俺さ、多分あんたが思っているような男じゃないよ」
「へっ?」
「運んであげたりはしたけどさ、それほど優しくも強くもない。勝手に王子様みたいに思われると、正直しんどい」
たしかに、水沢くんは私がピンチのときに現れる。
王子というか、ヒーローみたいな感じ。でも。
「王子様って……自分で言う? 私、そんなこと思ってなかった」
王冠を被った白タイツの水沢くんを想像してしまい、思わず吹き出してしまう。



