ハラハラしていると、茶髪の彼はふっと目を伏せた。
そして、次に開けた瞬間には……。
その瞳に、まるで別人のように凶暴な雰囲気を宿していた。
口元からは、いっさいの笑みが消えている。
その顔は、ぞっとするほど冷たく、そして美しい。
まるで、野生の獣みたい。
目の前にいた壁ドン女子はごくりと唾を飲み込むと、平然とした顔をわざと作り、仲間たちに言った。
「しらけちゃった。行こう」
そして校舎の方にはける間も、彼とはいっさい目を合わせようとはしなかった。
いや、合わせられなかったんだろう。
「はあ。何かわからないけど、災難だったね」
顔の筋肉をほぐすように瞬きをして鼻の横を押した彼は、そう言った。
そうだ。この前のお礼を言わなきゃ。
「あ、ありがとう……この前も助けてくれたよね」
そう言って近づくと、彼はにっと笑った。



