うなずいちゃおうか。
ちょうど、一度恋というものをしてみたいと思っていたんだ。
相手は別にブサイクじゃないし、俺様でもなさそう。
優しそうな好青年。どこも悪くない。
それなのに……どうしてだろう。
この胸のドキドキはきっと恋じゃなくて、初対面の人と話す緊張によるものだと、頭が理解してしまっている。冷却されていく。
「……ご、ごめんなさい!」
それだけ言って頭を下げる。
そして顔を上げると、相手の表情を見ないようにして、くるりと背を向けて走った。
だって、悲しい顔をしていたら……どうしたらいいのかわからなくなるじゃない。
悪いことをしちゃったけど、仕方ないよね。
だって、ときめかないんだもん……。
とにかくちゃんと断ったし、これで一件落着。そう思っていたら……。



