「私は世界中の誰より、幸せな女の子だよ」
周囲に誰もいないことを確認して、そっと健斗に唇を寄せる。
いびつな形のキスだけど、その温かさは変わらない。
顔を離すと、そっと背中を抱きしめられた。
左手だけのハグだけど、やっぱり温かい。
結局のところ、あの死神くんは本当にいたのだろうか。それとも、私が作りだした幻だったのだろうか。
もしかしたら、まどかさんさえ、私の思い込みが作り出したものだったのかも。
だってあれ以来、彼女に遭ったことがない。
じゃあどうして彼女の名前がわかったのかとか、健斗の過去が見えたのかとか、説明できないこともたくさんあるけれど。
いくら考えても、正しい答えは出てこない。
でももし、あの健康体が私の意志が作りだした奇跡だったとしたらと考えると、わくわくする。
だって、あんな奇跡を起こすことができた私なら、これからも生きてさえいればなんだってできるような気がしてくるから。
もう奇跡は起こせないとしても。
きっと、私は負けない。そう思えるから。



