「みず、ほ」
「うん?」
「いや、なら、すぐに言って。わかれたく、なったら」
「は?」
「他に、いい、男いたら、幸せに、なって、いいから」
途切れ途切れの言葉の途中で唾が口の端から流れてしまい、それをハンカチで拭ってあげながら、彼の言葉の意味を噛みしめる。
彼だって、このままリハビリを続けても、どこまで回復できるかは誰にもわからない。
私が抱えていた葛藤と、同じものを抱えているんだろう。
自分では、相手を幸せにするために何もできないんじゃないだろうかと。
「何言ってんの」
あなたは言ってくれたじゃない。
私が生きているだけで良いのだと。
茨だらけの道を選んで、それでも私と一緒にいたいと言ってくれた王子様。
「こんないい男、他にいないよ」
あなたは私に、たくさんの優しさをくれた。
そう、愛をくれたんだ。
今だって、雨のように降り注ぐあなたの気持ちを感じている。



