それを愛だというのなら



──一か月後。


私は定期検診のついでに、いつも通っている総合病院の二階にある、リハビリ室を訪ねていた。

中ではたくさんの人が療法士と共に様々なリハビリに励んでいる。

プライバシー保護や、患者の邪魔をしてはいけないという理由で目の前まで近づくことはできず、私は待合室で彼を待つことにした。

持ってきた文庫本をめくりながら待っていると、やがて待合室の自動扉が開いた。


「やあ、瑞穂。また、せた?」


声をかけてきたのは、車いすに乗った健斗だ。

少し長かった髪を短く切り、余計に小顔が強調されている。

けれどその顔は、元のように綺麗ではない。

文化祭の事故の時に頭と肩に大けがを負った健斗の耳の横には、その時に追った大きな切り傷の跡が。

そして、事故の影響で衝撃をくらった脳のおかげで、右の目元と口元がマヒしてしまっている。そのせいでか、話すのもゆっくりで、元のように明瞭ではない。