それを愛だというのなら



「どっちも、死なない方が良いに決まってる。そうだろ」

「うん……」

「一緒に生きよう、瑞穂」


そう言い、健斗は力尽きた。

握っていた手から力が抜けていき、薄らと開いていたまぶたは閉じられる。


「健斗……!」


まさか。ううん、大丈夫。きっと。私は、信じる。

顔を上げ、死神くんを見上げる。


「消えて、死神くん」

「瑞穂……」

「あんたたちみたいな人の心が作りだした幻に、ひざまづくもんか!」


たとえこの世に抗えない力があるのだとしても、それを神の力とか運命とか呼ぶのだとしても、私はそれをはいそうですかと承服するわけにはいかない。

神が膨大にいるこの世の誰かひとりだけ選んで、奇跡を起こすか? 同じように、人を殺すか?

そんなわけない。きっともっと大いなる力は、そっと私たちを見守っているだけ。

どう生きるかは、生きている私たちが決めるんだ。

生まれ持ったものは変えられない。それはきっと宿命と呼ぶもの。

だけどその後の人生は、いくつもの道に分岐しているに違いない。