「……め、だ……」
「健斗、健斗」
「ふ、ざけんな。なんで、みず、ほが、死ぬんだよ……」
切れ切れの息で、健斗はそう吐き出した。
「だって、健斗」
聞き取れないくらいの声で健斗が何かを言うので、口元に耳を寄せる。
「そんな、こと、されても、俺は、嬉しく……ない」
「でも」
「俺だって、瑞穂がいない世界なんて、いらない」
よほど苦しいだろうに、一生懸命にそんなことを言う健斗の声を聞いていたら、余計に涙が溢れる。
でも、このままじゃ……。
「惑わされるな、瑞穂。何が、死神だ。何が、神さまだ。そんなもの、いるもんか」
より強く、手を握られる。
まるで健斗が、残りの生命力を振り絞っている。そんな風に思えた。
「そんなもの、お前が作りだした幻想だ。そうだろう?」
幻想?
そんなわけない。
だって現実に死神くんは私の目の前にいて……。
待って。
これが現実? この何もない真っ暗な世界が、現実なわけがない。
死神くんは最初、私の夢の中に出てきた。
その時の私の心が作りだした、幻影だって言うの?



