それを愛だというのなら



「やだっ、どっか行ってよ。健斗は死んだりしないんだから!」


そもそも、健斗が死ぬ予定なんてなかったでしょ。

死神くん、そんなこと何も言ってなかったじゃない。


「予定外で死ぬ者もいる。それは、神の意志だ」


私の思考を読んだのか、死神くんは無表情で答える。


「神?」

「この世のバランスを取るため、神はランダムで人間に死を与える」


はあ、何それ。

神様がランダムに選んだ人間が、死ななきゃいけない? それがたまたま健斗だってこと? ふざけないでよ。

健斗が何をしたっていうのよ。もっと先に死んだ方がいい、極悪人だってこの世にはたくさんいるでしょうよ。


「それはお前が決めることじゃない。正義も悪も、どんな人間にも生きている意味はある」


じゃあ、何。健斗は生きる意味がないって言うの?


「ダメっ。絶対ダメっ」


健斗の前で膝立ちになり、両手を広げる。

その前で、死神くんが手を伸ばす。その手のひらに、銀色の鎌が現れた。