それを愛だというのなら



「やだ……ねえ、頑張って。救急車来るんだって。大丈夫だから、頑張ってよ」


こんなのおかしいよ。

確実に私の方が先に死んでしまいそうだったのに、どうして健斗がこんな目にあうの?

ずっと一緒にいようって、言ったじゃない。

ちょっと前まで、元気だったじゃない。

ねえ。笑って手を振っていたじゃない。


「いやあああああ、健斗ぉぉぉぉぉっ!!」


叫んだ瞬間、頭の中で何かがぶつりと切れたような気がした。

ぼろぼろと涙が零れていく目の前が、突然暗くなった。



何?

瞬きをして周りを見る。

黒い黒いその空間に、黒よりもっと黒い、漆黒の影が現れる。


「死神くん……」


私たちの前に現れたのは、終業式以来姿を見せなくなっていた死神くんだった。


「どうして……」

「お前が、死にゆく者のそばにいるから」


死期が近い者のそばにいるから、私にも死神が見えるって言うの?

冗談じゃない。それじゃ、健斗が死んでしまうという意味になる。