それを愛だというのなら



だって、あの王子の姿が痛々しくて。

自分がどんなに傷つこうと、辛い思いをしようと、とげのある茨をかき分けて進むなんて、病気の私と付き合う健斗の人生そのものを現しているみたいじゃない。


「わあ、すごーい。見てよ瑞穂、泣いている場合じゃないよ」


やがて、舞台の隅に巨大な張りぼてのドラゴンが現れた。周囲から歓声が沸く。

夏休み中に頑張って作ってくれた人がいたんだろう。

それは迫力のある顔をしていて、今にも本当に火を噴きそう。

涙をぬぐって、もっとよく舞台を見なきゃ。そう思った時。


「え。あれ、ちょっとヤバくない?」


会場がざわめく。

はりぼてのドラゴンが、ゆらゆらと揺れていたからだ。

それはバランスを崩し、今にも倒れそうになっているように見えた。

そう、観客席の方へ向かって……。


「危ない!」


健斗に知らせようと、その場に立ちあがった時だった。

ドラゴンがついに体全体のバランスを崩し、大きく揺らいだ。