それを愛だというのなら



「やだ、瑞穂の彼氏かっこよすぎじゃない?」


隣にいたサツキがこそっと耳打ちしてくる。

うん、たしかに……。王子様のコスプレなんて、絶対笑ってしまうだろうと思っていたのに、そこにいるのはたしかに王子そのもの。何の違和感もない。

優雅な仕草に、端正な顔。よく通る透き通った声。


「ありゃあもてるわ……明日から大変だね、瑞穂」


私はそんな友達の軽口に答えることもできなかった。

ただこの瞬間を忘れないよう、健斗の姿を記憶に焼き付けることに集中しようとしていた。

やがてオーロラ姫は魔女にかけられた呪いの通りに、糸車の針に指を指して倒れてしまう。

そんな彼女を救おうと、王子は茨をかきわけ、姫の眠る塔へ向かう。


「……うそ。瑞穂、泣いてんの?」


そんな声が聞こえて、初めて気づいた。自分の頬を、涙がつたっていたことに。