それを愛だというのなら



校内を一通りぐるっと回ったところで、健斗がそう切りだした。

腕時計を見ると、もう二時。劇は三時からの予定だっけ。


「うん、頑張って。楽しみにしてるね」


本当はもっと一緒にいたかったけど、仕方ない。来週は体育祭もあるし、その時は帰りまで一緒にいればいいや。

笑って手を振る健斗に手を振り返して見送り、制服に着替えてクラスの教室へ戻る。

二年生の演劇は全生徒強制参加なので、一年と三年は観客として体育館へ集まることになっている。

二年は自分たちの教室をあらかた片付け、それぞれの持ち場につく。

私とサツキたちは会場整理。といっても、各クラスごとに固まってきてくれる生徒を席に案内するだけで、幕が上がる前に仕事は終わってしまった。


「じゃあ、あとはゆっくり見せてもらいましょうかね」


同じように本番中は仕事のない小道具や大道具など、裏方の二年生は一番後ろの方の席につき、本番を見守る。