それを愛だというのなら



画面におさまるように寄り添うと、健斗も微笑んでシャッターを押した。

けれど、それが終わるとすぐに離れてしまう。


「やべ。これ恥ずかしいわ」


そう? 花火の時にキスもしちゃったし、あれに比べれば自撮りなんて普通じゃない?

首をかしげて見上げていると、健斗は咳払いをし、いつもの顔に戻った。


「よし、行こう」


手を繋がれ、目の前の美術室に入る。そこには、美術部員の作成した絵や彫刻などなどが飾られている。けれど、部員以外の人は少なかった。


「人、いないね」


こっそり言うと、健斗もひそひそと返してくる。


「美術部ってオタクが多いだろ」


たしかに、普通の油彩や水彩、彫刻より、ボードに描いた漫画のキャラクターのようなイラストの方が場所を取っている。


「でも俺は、人が一生懸命作ったものを見るのが好きなんだ。しかも静かな場所で」


なるほど。たしかに、どの作品もきっと誰かが一生懸命作ったに違いない。