だって、病気だからって暗くて重いと、周りの人の迷惑になると思って。
健康になって女子に絡まれた時にも言われたもん。私がいるだけで、教室の雰囲気が暗くなるんだって。
家でも、苦しくても痛くても、家族の前では泣けずにいた。
私が泣くと、お母さんたちがとても悲しそうな顔をするから。
だから、どんなにしんどくても平気な顔をすることが習慣になってしまっていたんだ。
自分でも、気づかない間に。
「ありがとう」
健斗は、そんな私に気がついたんだね。
でも私、健斗といると嬉しくて、やっぱり笑顔になってしまうよ。
「無理はしないようにする」
そう言うと、健斗はやっと笑ってくれた。
その日から健斗は、毎日お見舞いに来てくれるようになった。
夏期講習が終わってから、お母さんが仕事を終える、夕方のわずかな時間が、私の一番の楽しみとなった。
私は健斗をお母さんに合わせても全然恥ずかしくないんだけど、健斗はかたくなに遠慮した。



