健斗はその日、夕方にお見舞いに来てくれた。

見慣れた夏服の彼は、スクールバッグを肩にかけていた。


「ごめん。食べ物も花も、持ってきていいのかわからなかったから」


そう言って差し出したのは、女子高生向けのファッション誌だった。

きっと、入院中に暇してるだろうと思って買ってきてくれたんだろう。


「レジに持っていくの、恥ずかしくなかった?」

「恥ずかしかったに決まってるだろ」


そう言って首の後ろをかく健斗が可愛くて、にやけてしまう顔を雑誌で隠した。

あまり大部屋で話をしていると、他の患者さんに迷惑かもと思い、休憩室で話をしようとしたけど、どうも看護師さんたちがこっちを見ているようで気になる。


「瑞穂ちゃん、病院内なら自由に歩いていいから。刺激の強い食べ物はダメだよ」


にこにこと笑いながら、担当看護師さんが言いにきてくれた。

そう言えば、病院の入口を入ってすぐのところに、カフェがあった。

点滴はまだ終わりそうにないし、少し散歩をしてきても大丈夫そうだ。