「彼女は言ったの。健斗には、普通の、健康な女の子と幸せになってほしいって」
「……うん」
「私、学校を休んでいる間に、病気が再発しそうだっていうことがわかった直後だったの。それをまどかさんは知っていたんだと思う」
嘘をつくとき、鼓動がおかしなリズムになり、指先がちょっと痛くなったような気がした。
本当は、このまま約一か月後に死ぬか、病気のまま生きるか迷っているところだった。
どっちにしても、健斗を巻き込むわけにはいかないと教えてくれたのが、まどかさん。
「まどかは今日も、近くにいる?」
意外な質問をされて、思わずうつむいていた顔を上げてしまった。
「う、ううん。今日はどこにもいないみたい」
一応きょろきょろと周りを見回すけど、いたって平和な昼の公園の景色しか見えない。
「そっか。今度見えたら言っておいて。俺のことをそんなに心配しなくてもいい。大丈夫だから、まどかは安らかに眠れる場所に行っていいんだって」



