それを愛だというのなら



「暑いな」


一応屋根がある休憩スペースのベンチに空間を開けて座るけど、冷房があるわけじゃない。

座っているだけで、汗がにじんでくる。

黙ってうなずくと、健斗は小さく息をついて話しはじめた。


「この前のことだけど、正直、俺まだ何が起きたのかわからないような状態でさ。フラれたんだっていうのはわかるんだけど、どうしてそうなったのか、説明してもらえないか」

「説明……」

「まどかのことが見えるとか言ってたじゃん。真剣に聞くから、瑞穂に何が見えてどう考えたのか、教えてほしい」


こちらを見る色素の薄い瞳は、悲しくなるくらい澄んでいた。

本当のことを洗いざらい、話してしまいたい。

でも、できない。いくら健斗が真剣に聞いてくれたって、死神くんのことを言いだした時点で頭がおかしい子だと思われてしまう。きっと信じてもらえない。


「あの日、健斗の後ろにまどかさんが見えたの」


信じてもらえないかもしれない。

けれど、なるべく嘘はつきたくなくて、慎重に言葉を選ぶ。