それを愛だというのなら



一瞬、まさかと思う。もしかして、健斗?

けれど、すぐに思いなおす。

一方的に別れを告げた日から、登下校の途中や家にいるときも、バイクのエンジン音がするたびに彼を思い出してしまう。

ここは、彼の家がある方向とは全然違う。こんなところにいるわけがないんだ。

自分に言い聞かせながら自転車をこいでいると……。

車道を走っているはずのバイクのエンジン音が、どんどん近づいてくる。

そろそろ追い越されるだろうなと思った瞬間、交差点に差しかかった。

隣を走ってきたバイクが、私の目の前で左折し、横断歩道をふさぐ。

何なのよ!と、普通なら思っただろう。

けれど私は、自転車にまたがったままブレーキをし、そのまま言葉を失った。

横断歩道をふさいだ迷惑者が、ヘルメットを脱ぐ。

その下から現れたのは、日に透けて黄色に近い茶色になった髪と、色素の薄い瞳だった。


「健斗……」


どうしてこんなところに、なんてマヌケな質問をする理由はない。

私に話があるに決まってる。