「うん……ちょっとね。いろいろとあって」
結局、彼と付き合っていた時間は、一か月にも満たなかった。
色々なことを思い出すと、みんなの前なのに泣きそうになってしまう。
ちょうどその時、チャイムが鳴って担任が教室に入ってきた。
「おお広瀬、復帰したか。ほら、テストの成績」
彼は私に細長い紙きれを渡す。
「ありがとうございます」
順位を見ると、前のテストよりクラスで10番も上がっていた。
健斗に教えてもらった数学の点数が上がったおかげだ。
そう思うと、嬉しいはずのことなのに、すごく胸が苦しくなった。
「夏休み前で浮かれる気持ちはわかるが、ここは休み明けのテストに出すぞ。よく聞いておけよ」
やがて始まった一限目の授業に集中する。
大丈夫、大丈夫。
病気が再発したって、きっと大丈夫。
今さら遅いかもしれないけど、頑張って進学を目指そう。
何かに集中している方が、健斗のことを考えなくて済むから。
ねえ、健斗。本当にごめんね。
健斗もどうか、お医者さんになる夢を捨てずに、頑張って。
病気で苦しむたくさんの人を、助けてあげてね。



