「ごめんなさい。もらえない」

「えっ?」

「もう、これきりにしてほしいの。ごめんなさい。本当にごめんなさい」


生きるにしたって死ぬにしたって、もうこれ以上健斗を私の歪んでしまった人生に巻き込むわけにはいかない。

まだ、出会って三週間と少し。

長い時間を共に生きてきたまどかさんと比べれば、傷は小さくて済むはず。


「これきりって……」


今の状況を全く理解できていないという風に、健斗の眉間にシワが寄る。


「まどかさんが、見てる。私は健斗に相応しくない。そう思ってる」

「は? っていうか、どうしてまどかの名前を……」

「私、幽霊とか死神が見えるの。ごめんね。こんなキモイ女、別れた方がいいでしょ、絶対」

「見えるって……嘘だろ、瑞穂」


困惑しきった顔の健斗。

もう見ていられなくて、目の前の玄関のドアを閉めてしまおうとした。

すると、健斗が素早く自分の靴を隙間に差し込む。