「どうした?」
健斗が私の顔をのぞきこむ。
けれど私は、背後の女の子から目が離せなくなっていた。
大声を上げて逃げたいのに、まるで金縛りにあったように体が動かない。
『……めて……』
隙間風のような声が、鼓膜を不吉に震わせる。
『もう、やめて……健斗を、傷つけないで……』
泣いているような声が、私を責める。
『あなたが……死んだら……健斗は、もう立ち直れない……』
「あなたは……」
『私は、まどか。健斗の……幼なじみ』
やっぱり。この子は、健斗の元カノで幼なじみ。
名前はまどかっていうのか。
「まどか……さん……」
喉から、からからに乾いた声が出た。
それを聞き、健斗の顔が強張る。
私の視線の方向を振り返り、首をかしげた。
やっぱり、健斗には見えない。声も私だけ聞こえているみたい。
どうしようと思っていると、急にめまいがしたときのように、景色が歪んだ。
脳が揺さぶられるようで、気持ち悪い。



