それを愛だというのなら



「ん?」


健斗は振り向き、左手を見る。


「あ、そうか。ごめん」


何故か彼は謝ると、一度私の手をほどく。

嫌だったの?

ちょっとショックを受けていると、健斗は一度離した手を、ぎゅっと握りなおした。


「はぐれたら困るもんな」


握った手を引かれて、歩き出す。

夏の暑さですぐに手のひらが汗ばむ。

手……初めてつないだまま、歩いてる。

たったそれだけのことなのに、胸がとくとくと鳴っていた。


「わあ、にぎやかだね」


駅から十分ほど歩くと、お祭りのメインの通りに差しかかった。

夜店が立ち並ぶその通りは文字通り人が溢れかえっていて、どのお店も行列ができている。

近くにいた子供が持っているリンゴ飴を浴衣につけられないように注意しながら歩く。


「あっつ~い」

「何か飲む? それか、氷とか?」

「炭酸飲みたい~」


ついでにお腹が空いた。

花火が撃ち上がるまでに、まだ時間がある。