「ちょっとー、返事くらいしてよ」
「これから花火ですか? それとも俺たちとカラオケですか?」
にやにやと私を囲む男の人たち。
たぶん、大学生くらいだろう。吐く息がちょっとタバコ臭い。
浴衣着てんだから、誰かと待ち合わせて花火見に行くに決まってるじゃん。
早くどこか行ってくれないかな。
「もしかして、彼氏待ち?」
「こんな日に待たせるようなやつはほっといて、さあ行こうか」
無理やり肩に手を回されそうになり、さすがに恐怖が湧く。
「やめて──」
後ずさると、ふわっと後ろから手を回された。
「こんな日に待たせる奴でごめんなさい、おにーさんたち」
「健斗!」
後ろから私を抱きしめるようにしたのは、健斗だった。
「なんだ。行こうぜ」
大学生たちは、あっさりとその場を去っていった。
私からは見えなかったけど、例の鬼のような目でにらんだりしたのかな。
彼らが見えなくなると、健斗は手を離した。



