それを愛だというのなら



「ありがとう。行ってきます。帰りはまた電話するね」


車から降り、券売機の前に行くと、同じように浴衣を着た人がたくさんいた。

彼らに続いてホームに降りてすぐに来た電車に乗り、二十分ほど揺られると目的の駅につく。


「な、なんてたくさんの人なの……」


あまりの人の多さに、すでに疲れてしまった。

もみくちゃにされるということはなかったけど、ちゃんと健斗と合流できるだろうか。

一応指定された改札前の太い柱の前で、『今着いたよ』とメールを送る。

それを巾着の中にしまい、健斗が現れるのをきょろきょろと周りを見て待っていた。

それほど大きな駅でもないのに、人がたくさん行ったり来たりしている。

少し待っていると、目の前で三人組の男の人が立ち止まった。


「あれ、ひとり?」


突然話しかけられ、思わず顔を上げて目を合わせてしまう。

あまりに馴れ馴れしい話し方だったから、もしや知り合いかもと思ってしまったのが間違いだった。これは無視するしかない。