それを愛だというのなら



ちなみに今着ている浴衣は、もともとお母さんのものだった浴衣。

緑に近い黄色に、紺色の草の模様。ポイントに、ピンクの丸がところどころについている。

最初に見た時は、地味だなあ、ピンクとか可愛い色が良かったなあと思ったけれど、着付けてもらって鏡を見ると、これはこれで悪くない。


「くそ~罰当たれ~」


家を出る瞬間までぶつくさ言う秋穂に呪いをかけられる。


「いい加減にしなさい、秋穂」

「だって、私だって、いっつも我慢してたんだけど。ご飯だっておやつだって、もっとがっつりしたもの食べたかったし、旅行だってお姉ちゃんの鼻注があるから行けなかったんじゃん!」


鼻注って言うのは、鼻からチューブを入れる、例の栄養剤の点滴みたいなもののこと。


「秋穂!」


しつこいついでに今までの正直な思いをぶちまけてしまった秋穂に、お母さんが怒鳴った。

秋穂はばつの悪そうな顔をし、ぷいと踵を返すと、二階へダッシュしてしまった。