特別暑い、日曜の夕方。
「え~、お姉ちゃんだけずるい~」
中二の妹、秋穂が浴衣を着付けてもらった私を見て、不満を漏らした。
「しょうがないでしょ。秋穂はまだ中学生なんだから。子供だけで夜出歩いたらダメよ」
「中学生も高校生も変わらないじゃん」
「近所の夏祭りなら行っていいわよ」
「はあ? 意味わかんないし」
近所の夏祭りというのは、自治会が主催の、公園にやぐらを組んで盆踊りを踊り、その周りに申し訳程度の夜店が出ているお祭りのこと。
しかもその夜店は子供会がやっていて、50円の輪投げとか、とにかくしょぼい。
景品は各家庭から集めたいらないおもちゃばかり。
ハンバーガー店のキッズセットについている景品とかね。
喜ぶのは小学生低学年まで、あとの参加者はおじいちゃんおばあちゃんばかり。
「よし。急だったから新しい浴衣は用意できなかったけど、これでも十分可愛い」
お母さんはブーブー言う秋穂を無視し、私の浴衣姿を見て満足そうに微笑む。



