部屋の中の和やかな空気に、そう期待せずにはいられない。

健斗はきっと、中学のときに学校でとても傷つく出来事があったんだろう。

だから一匹オオカミになっちゃったんじゃないかと推測する。

無理にみんなと仲良くする必要なんてないけど、だんだんと中学の時の嫌な思い出が薄くなっていけばいいな。

そんなことを考えていたら、自分のセリフをすっかり見落としていて、みんなに突っ込まれてしまった。

次の日の休み時間に劇の練習がさんざんだという話をしていたら、真面目な顔でサツキが言った。


「それは良いけどさ、瑞穂は進路どうするの? 志望校、もう決まってるの?」

「あ……えと……」


正直、何も考えていなかった。

病気の頃から、どうせ進学も就職もできないだろうと思っていたから。

クローン病はストレスが大きな影響をもたらすので、受験なんてしたら、たちまち胃が荒れて腸が狭窄するような気がしていた。

元気になってからも、先がないのがわかっていたから、無意識に考えないようにしていたのかも。