「お母さん……」 「今度彼氏を、うちに連れてきてね」 お母さんはそう言うと、すたすたとキッチンを出ていった。 二階にいる妹を呼ぶためだろう。 お母さんが乙女だった頃かぁ。 今の姿からは想像もできないけど、きっと私と同じように恋をしてきたんだろう。 「ありがとう」 きっと心配もしているだろうに、私の意志を尊重し、信用してくれるお母さんにそっとお礼を言った。 聞こえないのはわかっているけど、気持ちはきっと届いていると思えた。