昼休憩に、受け取った台本を持ち、いつもの屋上貯水タンクの影へ。


「もう。王子が健斗じゃなかったら、絶対に断ったのに」


膨れたままお弁当の蓋を開ける。


「俺も、俺が王子じゃなければ、瑞穂に姫なんてやらせないね」

「どうして?」

「他の男といちゃいちゃすんの、演技でも見たくないから」


うわ。そんなこと言っちゃって。それって嫉妬じゃない。嬉しくなっちゃうよ。


「つうか、俺に王子なんて務まるのかね」


自分で受けたくせに……。

つっこむかわりににらむけど、全然平気な顔で私が握ったおにぎりをほおばる健斗。


「恥かきたくないなら、真面目にやらなきゃ」


こういうのって、照れたり中途半端にやったりすると、余計にぐだぐだになるんだよね。

やるなら真剣にやった方が、まだ恥ずかしくない。


「出たよ。瑞穂のウザい発言」


健斗はくすくす笑いながら、片手で台本を広げる。

私もおにぎりを食べながら、台本に目を落とす。

けれど、その内容はほとんど頭に入って来ない。