「理系クラスの、水沢くんです!」
理系クラスの水沢……。
水沢健斗!?
「あーなら瑞穂でいいじゃん」
今はもう健斗との付き合いに何も言わなくなったヒトミが笑う。
な・ん・で・だー。
友達もいない、協調性ゼロに見える健斗が、なぜ王子役なんて?
混乱していると、教室が違うざわつきを見せた。
なに? とみんなが見ている教室の入口を見ると……。
「みーずほ。現国の教科書貸して」
のん気な顔をした健斗が手を差し出して立っていた。
「あっ、げ、現国?」
慌てて机から教科書を出して、彼の元に近づく。
クラス中がこちらに注目しているようで、強い視線を感じた。
「ねえ、文化祭の主役受けたって本当?」
こそっと聞くと、彼はさらっと答えた。
「うん。すげーやだけど、それやったら進級させてくれるって言うから」
「は?」
「音楽の授業サボりすぎて、そうしないと単位がもらえないから。さすがに留年はだるいし」
まーじーかー。
って言うか、文化祭の劇出たら単位がもらえるのか。なんて自由な公立高校だ。



