「お願い。最初は出番が多いけど、中盤からはほぼ寝てるだけだから!」
眠れる森の美女だもんね。
糸車に指刺して倒れてからは、たしかに寝てるだけ。
じゃあ、私じゃなくてもいいんじゃないかい?
「でも、もう少し綺麗な人とか……ね。私じゃタイトルに負けちゃうから」
人前に出るのなんて無理だし、何より私、文化祭の時は生きてないから。ここで受けたら逆に迷惑かけちゃう。
なんとか断ろうとしているのに、サツキが余計な事を。
「やってあげたら? ただし、王子はイケメンに限るけど~」
あははと笑う周り。ひどいよ。私も演出さんも必死なのに。
「ごめんね、気にしないで。どうか、別のひとを……」
ふるふると震える演出さんをなだめようとすると、彼女はかっと目を見開いた顔を上げた。
「王子ならっ、イケメンです! だからどうか、お願いしますっ!」
「は? え?」
「えー、だれだれ王子。イケメンなら私やろっかな~」
茶化すサツキの言葉は無視し、彼女は続ける。



