【短編】あいのうた

 僕のお気に入りの店は。

 菜の花畑の真ん中にぽつんと建っているような、辺鄙な場所に立っているのにもかかわらず。

 いつも込み合っている。

 料理は、何を食べても美味いし。

 昼でもぐっと照明を落とした店内は。

 とてもミステリアスで雰囲気がいいから、仕方が無いか。

 僕だって、奈々としょっちゅう来ているぐらいだ。

 今日は、井上教授と二人。

 店の扉をくぐる。

 空腹な上に、少し待たされて、席についた頃には。

 テーブルの上に、山盛りになるほどの料理を注文していた。

 そして、『いただきます』のあいさつもそこそこに。

 僕と、井上教授は夢中になって、黙々と料理の山をくずしてた。









 ……だから、気がつかなかったんだ。








 僕の席の真後ろに。

 奈々が、他の男と座ったこと、なんて。