その日の夜、メールチェックをしたら、すごい数のメールが入っていて、びっくりした。

 メールアドレスだけという人が殆どだったので、誰が誰か分からなかったが、きっちりと本文を入れてくれてた人もいて、返事を書くのに戸惑ってしまった。

 そこに近江君からのメールが入っていた時はドキッとしてしまった。

 短いがきっちりと本文も書いてあり、私は一字一字噛みしめるように読んだ。


 遠山へ
 なぜあんな提案をしたのか俺はすぐに分かった。
 ありがとな。俺もこのクラスの一員だったという事は忘れない。
 近江晴人


 近江君はやっぱり分かっていた。

 入学式で撮ったクラス写真に自分が入ってない事を。

 そして、この文面からして、気持ちは留学へ向いているのも伝わってくる。

 近江君はもうすぐ、アメリカに行ってしまう。

 絶対英語をものにすると意気込んでいた。

 近江君ならきっとやり遂げるだろう。

 私は近江君に返事を書いた。


 近江君へ
 もうすぐ出発ですね。きっと待ち遠しいのではないでしょうか。
 頑張って来て下さい。
 遠山


 無難な返事だった。

 でも私の目は今涙で一杯だった。

 本当はもっともっと自分の気持ちを綴りたいのにそれができなかった。

 『近江君と暫く会えなくなると思うととても寂しいです』

 この言葉ですら、入れられなかった。

 私は逃げるようにさっさと画像を添付して送信した。

 その後、近江君からまたメールが来るんじゃないかと期待していた。

 全てのメールの処理をして、画像を添付し終わっても、私はずっとコンピューターの前で待機してしまった。

 でも近江君からのメールはそれっきり届くことはなかった。